第46回演奏会にむけて


演奏会が近づいても、 なかなか一筋縄ではいかないベルリオーズの「荘厳ミサ」。 一人の団員「みんなはどんな気持ちで歌っているのか、どんな演奏会を作ろうとしているのか、 みんなの気持ちを知りたい」という声から、 しんりょく(毎週発行している団内紙)で 『グリーンの「荘厳ミサ」と「合唱幻想曲を作っていこう』という連載がスタートしました。 苦しみながら、励まし合いながら、私たちはこんなふうにして演奏会までこぎつけました。

(B−チュウジさん)2002.10.10
最初は、とっつきにくい曲、なんだこの曲と思いました。 音はそれほど難しくないのに、とりにくい。 とれないなんてシャクだと思って、自主練習に出ました。 CDやFMの録音なども、いろいろ聞いてみました。 そうして、歌えるようになってきたら曲の印象がずいぶん変わってきました。 たしかに変わっているけど、この曲はエネルギーをぶつけられる、なるほど20歳の時の作品だなって。 そして、この曲にグリーンの力をぶつければ、生き生きとしたほとばしりが生まれるのではないかと。 作者自身がいったん破棄した曲だけど、世に出て演奏もされ、グリーンも取り上げた。 せっかく歌うんだから、高齢化なんて吹き飛ばして、みんなの心の中にある若い力をこの曲で取り戻したい。 それに、曲というのは演奏が完成させる、 つまり当時の評価はパッとしなくても良い演奏をすることで高く評価されることもあると思う。 僕は、すばらしい演奏をしてこの曲が再評価されるように、それをグリーンでやりたいと思っています。 変な作曲家だし変な曲だけど、とっつきにくさだけであきらめている人がいたら、 気持ちを新たにして一緒に作ろうよと伝えたいです。
(A−トッポさん)2002.10.24
私は、上の子(5歳)の出産で1年、下の子(3歳)の出産で2年半のブランクを経て、 昨年の合唱祭前に復団しました。 「荘厳ミサ」は、「ヴェルレク」や「カルミナ」と違ってグリーンの全員が初めての曲だったので、 新鮮な気持ちで取り組めました。 一から譜読みして、アルトはオクターブ下の部分もあって、目が泳いだり迷ったりしたけど、 音と格闘して頭がウニウニする感じも楽しかったです。 今は9割ぐらいは暗譜できたかな(ときどき作詞作曲して歌ってしまい、迷惑をかけつつも…)。 もちろん、全曲暗譜をめざしています。 以前と違って、練習に行きたくても行けないこともあるし、 来たら来たで「留守番させている子どもに悪いな」と思うこともあるけど、 私にとってグリーンの時間だけは「だれも奪わないでね!」という貴重な時間なんです。 幸い、子どもたちも応援してくれるし、主人の両親も気持ちよく送り出してくれるし、 そんな家族のことを考えても生半可では歌えないというか。 団員のみんなも、仕事や家のことをしながら、それぞれ時間を作って百何十人が集まって、 曲を創り上げているんですよね。 それって、とてもすごいこと、すばらしいことだと思うんです。 当たり前にある時間じゃない。 そう考えたら、もっともっと踏み込めるところ(姿勢に気を配るとか、指揮を見るとか)が、 まだまだたくさんある、まだ余力を残していると思います(自分も含めて)。 それをのり越えると、今よりさらにいいものが創れるんじゃないかな。 本番まであと1ヶ月ちょっと。 日常を越える本番モードが、私は大好きです。 まだまだできる!そのカギは、一人一人が握ってる! これぞ「グリーンの荘厳ミサだ!」というものをみんなでめざしていきましょう。
(S−F・Aさん)2002.10.31
グリーンには、カルミナが歌いたくて昨年3月に入団しました。 カルミナで多いに盛り上がったあとの、初回のベルリオーズ練習は、私にとっては悲惨でした。 その後も、ちっとも歌えなくて恨めしい気持ちで音符を眺めていることが続いたんですが、 ある時「この曲の成功は、ソプラノの出来にかかっているといってもいいくらいだぞ」と、 重大な責任に気づき、目が覚めました。 また、先日G・Tさんが貸してくださったデュトワ指揮の「荘厳ミサ」を聞いたとき、 とても新鮮なものを感じました。そして、「普段の練習の中にも、毎回新鮮な発見や喜びがあるはずだよな。 自分の声やみんなの声をそういう構えで聴き合っていたら、 もっと気持ちが通じ合うのでは?」と思いました。 みんなの声がまとまってくるというのは、技量だけの問題ではないというのは、こういうことなのか。 それなら、個々の技量には限界があるとしても、まだまだやれることはある。 そう思うと、1回でも多く、1人でも多くの人と歌いたい。 そうやって、自分の中で「グリーンの荘厳ミサ」を求め、可能性を広げていけたらいいなぁというのが、 今の私の気持ちです。
(B−G・Tさん)2002.11.7
「荘厳ミサ」の譜読みの頃、 ベースは同じ音や単純な音型が多くて「なんだ、ソルフェージュみたいだ、つまらないな」 という声が多く聞かれました。 でも、歌い込めば歌い込むほど、いろいろなことを感じさせてくれる曲で、 特にベースの音にほかのパートがのると、とてもおもしろくなる。 それを楽しみながら歌っています。 宗教曲だけど、ベルリオーズの若々しさ、勢いのよさ、血の気の多さ(?)に、 フランス革命前夜の音楽(??)を感じたりしながら。 前回F・Aさんがいっていたデュトアの演奏は、もともとU・YさんがFMから録音したもので、 市販されているガーディナー版に比べれば、多少荒さが目立ちます。 でも、とにかく元気がよくて、スケールが大きくて、こちらのほうがいいなあと思う何かがある。 グリーンの演奏に近いような感じがします。 あれを聞くと「荘厳ミサ」やベルリオースの持ち味は、 縮こまらずに演奏したときにほとばしり出るのではないかなと思いますね。 グリーンにふさわしい宗教曲なんです。 阪さんが登場してから気合いが入り、曲の姿が見えてきて、自分の中の思いともつながり、 練習もますますおもしろくなってきました。 あとは、残り少ない時間の中で、グリーンがどこまで「グリーンらしい」曲づくりができるかです。 「合唱幻想曲」も昭和42年頃に初めてLPを聞いて「いつか演奏した!」 とヴォーカルスコアを買い込んだほど感動した曲です。 マールボロ音楽祭で1957年から20年ぐらい、毎年音楽祭のフィナーレを飾っていたし、 小沢征爾のボストンラストコンサートでも演奏されました。 ベートーベンらしい、高揚感にあふれた、祝祭的雰囲気の濃い、歌い甲斐のある曲です。 友人知人にも「とてもおもしろい、素晴らしい曲だよ。 チケットよろしく!」と書いて、手紙をたくさん送りました。 ともかく、ワクワクしながら楽しんで歌いましょう。
(A−久美ちゃん)2002.11.14
 歌が好きで、どんな曲でも好き嫌いなく取り組めるほうなんですが、「荘厳ミサ」の譜読みの頃、アルトはオクターブ下で視覚的に「うわっ」て思ったり、メロディが流れていく感じもあまりないし、歌詞がうまくはまっていないなぁと感じることがありました。でも、4パート全体がまとまって、流れをとらえられるようになると、役割やポジションが見えてきて「いい曲だなぁ」と思えるようになりました。アルトはほかのパートを聴いて歌わないといけないので、聴こうと努力しているし、グリーン全体も、もっとお互いに聴き合って歌えたらいいなあと思います。指揮者の阪さんも、久々にのって歌える指揮者なので、こちらもアンテナをいっぱいに張って、めいっぱい感度を上げて応えながら、「私たちはこう歌いたいんだ」という思いを伝えていきたいですね。音や歌詞をつけて、歌い込むところから“音楽”は始まります。自分たちの気持ちを思い切りぶつけられるのは、アマチュアの強みだし、活かしてくれる指揮者だし、うまくいけば大成功ですね。これからは、全部阪さんの練習、つまり演奏会間際なんだけど、そのことをものすごく感じている人と、まだまだゆったり余裕?の人がいます。それは、いい意味ではまだ余力があるということでもあるんだけど、もう本番に向けて温度差を縮めて、全体のエネルギーをぐわっと盛り上げていかなければいけない時期です。そのために、「自分だったらここをどう歌いたい」のか、もっと強く感じられるといいと思います。あと2週間だから、悔いのないように1回1回の練習を充実させていきましょう。
(S−K・Sさん)2002.11.21
地元の大垣で歌っていた合唱団は、昨年6月「カルミナ」を最後に解散しました。それで、名古屋で活躍している合唱団で歌いたいなという気持ちはあったんですが、時間的・経済的に無理だと思っていました。でも、グリーンの本格的な「カルミナ」を聴いたら「行きたい!」という気持ちでいっぱいになって、毎週せっせと通っています。入団してこの1年は、団内指揮者を先生と呼んではいけないというのに驚いたり、スタッフの人がものすごく前向きで自主的な活動をしているのに目を見張ったり、練習後のミーティングで出るいろいろな意見に感心したりと、新鮮な驚きの連続でした。私自身も、チケット委員に挑戦したり、チラシの挟み込みに行ったり、有志の練習や6時からの練習にも参加したり、車の中ではソプラノのパート練習を録音したテープを聴きながら歌ったり、グリーンにどっぷり浸かっています。何気なく聴いているFMもベルリオーズの曲だと耳が自然にダンボになってじっくり聴くようになりました。録音したテープを渡した友達も「すてきな曲」と本番を楽しみにしてくれています。歌だけでなく、いい出会いもたくさんできて、毎週木曜日は生き返る思いがします。グリーンで歌えて、本当に幸せです。団服もできあがりました。本番は、ときどき楽譜を盗み見つつ、しっかり指揮者を見て、皆さんの声を聴きながら足を引っ張らないように精一杯歌いたいと思います。
(B−河辺泰宏さん)2002.11.28
昨日のオケ合わせ、とうとうここまで来たという感慨とまだまだやるんだという決意をもって眺めていました。オーケストラの音の洪水の中で、初めて阪さんを訪ねていった大阪シンフォニーホールの楽屋でのこと、中岡さんのピアノを初めて聴いたステージのこと、青戸さんの声にしびれて「絶対にこの人に歌ってもらうんだ」と心に決めた新国立劇場の「サロメ」の舞台・・・いろいろな人に出会ったときのことを走馬燈のように思い出しながら、素人集団のグリーンがこの素晴らしい音楽家たちと一緒にできることの喜びをかみしめていました。音楽やっててよかった・・・。そう思える瞬間です。この時のためにみんな頑張ってきたんだ。人の力、それは結集させると本当に大きなエネルギーになる。あと少し、でもまだ時間は残っている。